無愛想教師の恋愛事情
家に帰り、一人きりの部屋に灯りをつける。

一人で住む庭付き一戸建ては無駄に広く、庭の手入れは自己流というか適当。とりあえず近所迷惑さえならなければいい。部屋も、自分が使う場所しか掃除はしない。

俺の愛車、最近エンジンもかけてない。明日は車で出勤するか。その前にエンジンかかるのか心配だ。


なんだろう。この寂しさ。
今まで何度となく、学校と家を往復しても何も感じなかったじゃないか。
清水家のアパートは、三人で窮屈そうだが、寂しいとかは無縁なんだろうな。

一人者だから寂しいのか?
付き合ってた彼女がいた頃はどうだった?寂しさなんて感じなかっただろ。
そういや、なんで俺はフラれたんだ?

ああ、忙しいとかなんとか理由をつけて、ずっと会わないで、放置していたからか。私のこと、どう思ってるの?とか言われて…俺何て言ったかな。

… 記憶がない。けれど、その時彼女に思い切り殴られたから、それ相応の酷い回答をしたんだろうな…。
あまり彼女がいるいないは関係なさそうだ。

清水家は、両親がいない家庭なのにとても明るい。初めは、複雑な家庭環境に問題ありかと疑ったが、理花さんを中心に仲良く助け合っていて、とても良い雰囲気だ。

この前も感じた。帰りたくない、もっとここにいたいなぁと。それくらい、居心地が良かった。

アパートの部屋は、狭いけれど清潔で整理整頓されていた。女の子の部屋ならではの甘い菓子のような香りがしてーー やめておこう。

欲を言えば、理花さんの手料理をゆっくり味わって食べてみたい。チキン南蛮は凄く旨かったから、料理上手は間違いないだろう。…哲君がなんだか意図的に俺の願望成就を阻止しているような気もするが、俺の考えすぎだろうか。

ー 理花さんに彼氏はいるのか ー

実のところ非常に気になる、かつ重要な問題だ。しかし、今はまだ聞く時ではない。それは時期を見て追々…

はあ…とため息が出た。俺はいったい何をやってるんだ。自分がわからない。
恋愛なんて女なんて、面倒なだけで懲りたはずだ。
ずっと避けてきたのに。
今の俺は自分でも信じられない行動ばかりだ。

それでも、また理花さんの笑った顔が頭に浮かんでくるのだから、本当にどうしようもないな。



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