無愛想教師の恋愛事情
* * *
今日は仕事の都合で、清水家での家庭教師は休みにしていた。部活動の大会で遠方に出向いていたので帰りの予定が読めなかったからだ。
帰宅して、すぐにシャワーを浴びた。
冷蔵庫で冷やしたミネラルウォーターを、一気に飲み干し一息つく。
午後7時前、外はまだ日が沈みきらず、うっすら明るい。 清水の勉強を見てやれたかな。
今から録り貯めた録画でも観るか。いや、早めに2学期の準備を進めておくか…。
腹が減ったな…。コンビニに寄れば良かった。
ソファーに寝ころがり、ぼんやりと宙を見つめる。
いったい、俺はいつもどうして過ごしていたんだ?
落ち着かない。適当にビールでも飲んでゴロゴロと休めばいいだろう?いっそ、さっさと寝てしまうか?
スマホを手に取ると、何件かメールが届いている。そのうちの一件に元彼女からのメールがあった。
俺に話があるから会いたいとの内容だ。思い出したかのようにたまにメールをよこすが、何を今さらだ。
ぱっと立ち上がる。やはり出掛けよう。
適当に理由を付けて、手土産でも持って。ついでに唯の勉強を見てやればいいな。
この時点で、何が目的で何がついでなのか分からなくなっている…
もう清水家に通いだして、5日目になる。唯は少しずつだが、弱点を克服しつつある。この調子なら、2学期にはかなり追い付くのではと思っている。
気分転換に運転でもするかと、愛車のエンジンをかける。道はそれほど渋滞もなく、スムーズに目的の駅前コインパーキングに到着した。
きっと、清水家では哲君がいつものように夕飯を作っているんだろうな。
たまには手土産にケーキでも買っていくか。駅前のケーキ屋に向かおうと前を見ると、その先を歩く理花さんを見つけた。
後ろから早足で近づき、ポンと肩を叩いた。
「きゃああぁぁっ!」
飛び上がる程の驚き方だった。あまりの悲鳴に、周囲の視線が俺に突き刺さる。
「ごめん!理花さん…」
「先生…」
俺を見た理花さんは、最初真っ白だった顔が一瞬で赤くなり、急にペコペコ謝りだした。
「ご、ごめんなさい。驚いてしまって、本当に失礼しました。」
「いや、急に肩を叩いた俺が悪かった。最初に声を掛けるべきだったね。」
「いえ…違うんです…」
赤くなった理花さんは、下を向いて口ごもる。ん?
「どうしたの?何かあったの?」
「あ、えっと、何もないです。驚きすぎました。私こそ本当にごめんなさい…。」
「…?」
俺はじっと理花さんを見つめた。
理花さんは、俺の視線に耐えられないのか、急に話をかえてきた。
「先生、今日は確かお勉強は休みでしたよね?」
今度は俺が視線を泳がす。
「いや、ちょっと用事が早く片付いたんで、唯さんの様子を見に行こうかな…とね。」
「そうでしたか…。いつもすみません。」
理花さんは、恥ずかしそうに笑顔を浮かべた。それにしても、さっきの驚き方は異常だ。
「理花さん?何かあったの?」
気を取り直し、理花さんの目をじっと見つめる。
俺は教師としての日常から、人の嘘や焦りを、相手の挙動や目線で感じとることに敏感だ。理花さんの挙動はまさに、何かを隠そうとしてる生徒そっくりだった。
今日は仕事の都合で、清水家での家庭教師は休みにしていた。部活動の大会で遠方に出向いていたので帰りの予定が読めなかったからだ。
帰宅して、すぐにシャワーを浴びた。
冷蔵庫で冷やしたミネラルウォーターを、一気に飲み干し一息つく。
午後7時前、外はまだ日が沈みきらず、うっすら明るい。 清水の勉強を見てやれたかな。
今から録り貯めた録画でも観るか。いや、早めに2学期の準備を進めておくか…。
腹が減ったな…。コンビニに寄れば良かった。
ソファーに寝ころがり、ぼんやりと宙を見つめる。
いったい、俺はいつもどうして過ごしていたんだ?
落ち着かない。適当にビールでも飲んでゴロゴロと休めばいいだろう?いっそ、さっさと寝てしまうか?
スマホを手に取ると、何件かメールが届いている。そのうちの一件に元彼女からのメールがあった。
俺に話があるから会いたいとの内容だ。思い出したかのようにたまにメールをよこすが、何を今さらだ。
ぱっと立ち上がる。やはり出掛けよう。
適当に理由を付けて、手土産でも持って。ついでに唯の勉強を見てやればいいな。
この時点で、何が目的で何がついでなのか分からなくなっている…
もう清水家に通いだして、5日目になる。唯は少しずつだが、弱点を克服しつつある。この調子なら、2学期にはかなり追い付くのではと思っている。
気分転換に運転でもするかと、愛車のエンジンをかける。道はそれほど渋滞もなく、スムーズに目的の駅前コインパーキングに到着した。
きっと、清水家では哲君がいつものように夕飯を作っているんだろうな。
たまには手土産にケーキでも買っていくか。駅前のケーキ屋に向かおうと前を見ると、その先を歩く理花さんを見つけた。
後ろから早足で近づき、ポンと肩を叩いた。
「きゃああぁぁっ!」
飛び上がる程の驚き方だった。あまりの悲鳴に、周囲の視線が俺に突き刺さる。
「ごめん!理花さん…」
「先生…」
俺を見た理花さんは、最初真っ白だった顔が一瞬で赤くなり、急にペコペコ謝りだした。
「ご、ごめんなさい。驚いてしまって、本当に失礼しました。」
「いや、急に肩を叩いた俺が悪かった。最初に声を掛けるべきだったね。」
「いえ…違うんです…」
赤くなった理花さんは、下を向いて口ごもる。ん?
「どうしたの?何かあったの?」
「あ、えっと、何もないです。驚きすぎました。私こそ本当にごめんなさい…。」
「…?」
俺はじっと理花さんを見つめた。
理花さんは、俺の視線に耐えられないのか、急に話をかえてきた。
「先生、今日は確かお勉強は休みでしたよね?」
今度は俺が視線を泳がす。
「いや、ちょっと用事が早く片付いたんで、唯さんの様子を見に行こうかな…とね。」
「そうでしたか…。いつもすみません。」
理花さんは、恥ずかしそうに笑顔を浮かべた。それにしても、さっきの驚き方は異常だ。
「理花さん?何かあったの?」
気を取り直し、理花さんの目をじっと見つめる。
俺は教師としての日常から、人の嘘や焦りを、相手の挙動や目線で感じとることに敏感だ。理花さんの挙動はまさに、何かを隠そうとしてる生徒そっくりだった。