無愛想教師の恋愛事情

イケメン家庭教師登場

「唯。夏休みに家庭教師をお願いすることになったの。
しっかり勉強して、成績アップよ！」

「ええええ？まじ？聞いてないしっ」
「言ってないもん。」

お姉ちゃんは、朝食後のお皿を洗いながら明るく告げる。

「お、お金は？家計は大丈夫なの！？家庭教師って、高いんじゃないの？」
「それは大丈夫みたい。それにねえ、唯の希望通りのイケメンで優しい先生らしいよぉ？良かったねえ。」

んぐっ…事あるごとに、自分で喚いていた言葉で首を締めるとは…
ちらりと哲兄を見ると、哲兄は慌てて目を反らした。
怪しい。
しかし時間もないので、仕方なく家を出て学校に向かう。

早いもので、今日は金曜日、１学期最後の日。明日からは夏休みだ。
はぁ。家庭教師か。
仕方ない。自分が悪いんだからなあ。
イケメンで優しい先生。まあ、悪くない。年上の大人の男の人…(ん？何歳なんだろ…)
仲良くなって、ムフフな関係になっちゃったりして…
乙女の妄想は尽きないが、あいにく学校に着いてしまった。

「……で、明日から夏休みの訳だが、以下の者は、7月の平日午前中に補習として登校を命ずる。部活の試合等以外は欠席は許さない。名前を読み上げる。ーーー 」

えええ～鬼、悪魔っ、と、あちこちから悲鳴が上がる。
当然、唯も含まれる。

「夏休み中、気持ちを引き締めて、事故などに遭わないよう……」

先生のお説教…いや注意事項は終わりがあるのかと思うほど延々と続き、やっと終わった時には、なんだか辛い夏休みが始まるような気さえしてきた。

でも、７月だけの補習だ。まあ、軽い軽い。あ、家庭教師来るんだった。イケメンイケメン。呪文のように心で唱えた。…よく考えたら、哲兄で全然良かったな。
今更後悔しても遅いんだろう。

しかし、この後本当に心の底から唯は後悔することになる。