君を忘れない~妄想の中の王子様

 海辺のそばのちょっとした段差につまづき、私は、バランスを崩して転びそうになってしまった。
 とっさにレイが、私を抱き留めた。

「ったく、危なっかしいな。……ほら!」

 私を立たせてから、改めて左手を出して彼が、言った。
 
(えっ!?)

 と、思いながらも、おずおずと、差し出された大きな手を握った。私の大好きな手。とても、温かい。

「きれいだな。」

「えっ?」

「見ろよ。星。」

「あっ、本当。きれい。」

 手をつないで、こうして一緒に歩くだけで、なんだか幸せで、舞い上がっていた。

 でも、こうして、レイと見た星空の美しさを、ずっとずっと、忘れたくない。そう、思った。

  

 
 




  

< 28 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop