君を忘れない~妄想の中の王子様

 私は、あわてて涙を拭いた。

 彼は、黙って冷蔵庫を開け、缶ビールを取り出した。それから、その缶ビールを私の頬に、くっつけてきた。

「きゃっ!冷たいっ!」

「ははっ。気持ちいいだろ。」

 言いながら、私の顔を覗き込む。私は、泣き顔を見られたくなくて、うつむいた。

 プシュッ、と缶を開け、ゴクゴクとビールを飲んでから、彼は言った。

「どうした?」
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