君を忘れない~妄想の中の王子様

「おっと…。」

 倒れそうになったところを、彼の腕に受け止められ、そして、そのまま横向きに抱き上げられた。

「ったく。しょうがないな。」

 そう言いながら、彼は私を抱きかかえたまま海を背にして、歩き始めた。

「ちゃんとつかまってろ。」

 ぶっきらぼうに言われて、私は、あわてて、仕方なく彼に腕をまわした。

「レイ。」

 歩きながら、彼は言った。

「えっ?」

 聞き返す私に、真っすぐ前を見たまま、彼は言った。

「俺の名。」



 


 
 
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