君を忘れない~妄想の中の王子様
新しい生活
 海辺から、そう遠くないところにその建物はあった。古くて大きな赤い屋根の、レンガづくりの家。よく手入れされた庭は、ハーブの香りがした。
 
 レイは、その家のソファに私をそっと下ろした。
キッチンらしき奥の部屋から小柄な年配の女性が現れた。

「まぁ、レイが女の子を連れてくるなんて。初めてね!」

 レイのおばあちゃんだろうか。優しそうなその女性が、眼鏡越しに微笑んだ。

「余計な事、言うな。」

 照れたように、レイが言う。
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