セルトリア学園





ヒロは自分から湧き上がる殺気を抑えきれずに
マールスを睨んでいた。



怖がったように声を上げたそいつは俺たちよりも
下の爵位しか持っていないシーベリアスの家
だった気がする。




しかし、そんなのは関係ない。




王族だろうがなんだろうが
セナに攻撃をむけるものは全て敵だ。




いつもの柔らかさは全て捨て去り
マールスをどうしようかと考える。



ヒロの殺気にやられて1本の木の葉が
枯れて空を舞う。



それにユイが気づき別の意味で体を縮めてしまう。



そして、ユイが懸念した通り、
その人物はやってきた。



カツカツと音を立てて
木々の並木道の奥からやって来るのは
この学校で最も有名な3人のうち1人。




その場にいたマールス、ユイ、ヒロはもちろん、
取り巻きや市民の男も体を強ばらせる。




この学園の肉体戦闘の王者であるその人物は
いつもの明るい雰囲気とは無縁のまま姿を現した。



「よぉ、ヒロ。
さっき、木の葉が落ちる音を聞いたんだが、
気のせいか?」



いつもの調子で開かれたその言葉は
ヒロにとって直ぐにでも
謝りたいような気持ちであった。



「レオン、兄。」



ヒロに話しかけたのは
レオナオス・カートン。
この学園の並木道、いや、
裏山には言ってはいけない理由の1人だ。



「アマトの魔法が阻害された理由は
お前かって聞いてんだよ。ヒロ。」



有無を言わせない口調で言う。



「れ、レオン兄が放棄した任務を、
俺がこなしてるだけだ!」



レオンはそれだけでなんのことかわかったのか
眉を顰める。



「そうか、来たのか、あいつが。」




レオンは少し寂しそうに呟く。




「悪いな、ヒロ、俺は今虫の居所が悪い。
こいつら全員連れてどっか行くなら見逃してやる。
だが、どっか行かないなら、」



そこで話を切きるレオンの狙いがわかったヒロは
ゴクリと唾を飲む




「嫌なら、死ぬ覚悟を決めろ」




そうレオンがいった瞬間取り巻きと一般市民、
そしてマールスが逃げ出す。




「あ、マールス!まて!」




ハッとしたようにヒロがマールスに呼びかけるが
自分の殺気とレオンの殺気じゃ怖さが
桁違いなことを知っている。



「おい、ユーハルイ・コーナス・イーベラス、
お前もここから出ていけ。」



そう言われたユイはレオンを直視して睨みつける。



「なぜ、セナを助けなかった。
あなたはずっと見ていた、」



レオンは片方の眉を上げるとさらに怒りを増す。



「言ったはずだ。虫の居所が悪いと。
さっさと行け。」



そう言うとレオンは2人に背を向けて
林の方へと歩いてゆく。
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