セルトリア学園
ユーハルイ・コーナス・イーベラスは
同級生の殺気に自分全身が怖がっていることを
思い知った。



そして、セナがマールスに攻撃された時に
何も出来なかった自分への怒りを
彼にっつけてしまったことを悔いていた。




マールスは私の許嫁だ。魔法の使えない私。
魔力量が多すぎて魔力抑制のブレスレットを
何個かしていてもまともに使えていない。




そんな私は父親の政略結婚の道具だ。
この高等部に入るのも反対され花嫁修業のために
家に戻ってくるよう言われたが
その反対を押し切ってまでここにいる。




そんな使えない私に出来た友達なのに
自分の婚約者の魔法に怯えてセナを護れずに
怖気ずいて魔力の稼働を止めてしまった。




そんな自分が嫌で、
謝りたくて、
足に力を入れるがスルッと力が抜けて
地面に落ちる。




情けない自分に涙が貯まる。




どこからが目線を感じて並木道の奥を見るが
何も無い。



しかし、視線はハッキリと感じる。
早く出て行けと促されているようで
気味が悪くなる。




ヒロ、そうセナに呼ばれた男は
自分の二つ下の学年の首席の子だった記憶がある。



勉強はできるし記憶力にも自信があるため間違いではないはずだ。




同じ伯爵の夫婦の元の養子だ。
彼は凄かった。
最後まで膝をつかず立ち向かった。
それでも今は辛いのか膝をついて
大きく呼吸を繰り返している。




話の見えなかったあの会話。
彼は何を知っているのか、セナは何者なのか、
それを知りたいが本人以外に聞くのは
どうかと思い思いとどまる。




思いっきり膝に力を入れて立ち上がると
膝が笑っていることに気づき
また情けなさがいっそう積もる。




ヒールスト・ローレス・ファーマン様と呼ぶと
虚ろな目をこちらに向けてくる。
声は出さず座ったまま頭を下げるだけだが
自然と怒りは湧いてこなかった。




むしろ納得してしまうほど顔色が悪い。





私がセナの場所を求めると少しだけ
目が光を取り戻し着いてこいと合図をされる。




私とヒールスト・ローレス・ファーマンは
歩き出す。
後ろからの視線を少しだけ気にしながら。
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