セルトリア学園
「セ、ナ様」
サクが出した手を引っ込めず
しかしセナの肩にも置けず迷いを見せる。
セナは少し息を吐いて空を仰ぐ。
そして直ぐにクルリとサクの方を向くと
笑顔をみせる。
「何年間も合わなかったんだもん。
仕方ないよね!うん!
次会ったらまた話しかけよ!」
そう笑って「頑張るぞー」というセナは
どう見ても空元気にしか見えないが
サクにはどうすることも出来ず
歩き出したセナの後ろに続く。
カツカツと軽い音をたてながら
来た道をもどるセナは手を後ろに組み、
風に髪を遊ばせ赤くなり始めた空を見上げている。
「ねぇ、サク」
「はい。セナ様」
少し斜め後ろを歩いているサクに
セナはそちらを見らずに問いかける。
「他のみんなも?」
その問に聞きたいことが分かったサクが
足元に目線を落とす。
「アマト兄とレーナ姉も、
昔と違って笑わなくなった。」
「そう」
「特に、ブラックカードを取ってからは
学校にも興味無いみたいで、
セナ様がいらっしゃった並木道に
ずっといるみたいで」
「うん。」
「でも、あの並木道はアルメス王国の
森の中にそっくりで!たぶん!3人とも
セナ様の忘れたわけじゃ!」
パチン!と自分のほっぺたから音がして
鈍い痛みが両頬を包む。
下を向いていた顔を勢いよく上げて前を見る。
そこにはセナの顔があり
薄く笑みを浮かべている。
「サク。誰かに言い訳してる?」
セナの問いかけの意味が分からずに
サクは瞳の中に疑問を浮かべる。
「サク、安心して。
私は皆のこと大好きよ。」
その言葉がサクの胸にストンとハマる。
ずっと怖かった。セナが来て、
もし今の三人の血の繋がらない兄妹の
姿を見てどう思うのか。
セナの言葉に夕焼けが目に染みる。
「サク、私は、三人のためにここに来たの。
皆、愛してるわ」
ハッキリと見たセナの顔には
微かに夕日を反射するものが頬にあった。
あぁ、だから、この兄妹に
俺達は憧れているのだ。