好き、禁止。

「なんで!?何が気に入らんの!?」

「気に入らないとかじゃないけど……」

「王子やで!?メロンの国からやってきた高級メロン様やで!?」

「色々間違ってるよね」

宗ちゃんは本気でびっくりしているようで、いつもなら即完食する大好物の白子ポン酢が目の前にあることもすっかり忘れているらしい。

神月くんのことを気に入らないとか、嫌いだとか、別にそういうわけではない。
ただ、私にとっての神月くんは、仕事熱心で愛想のいい見るからにモテそうな年下の男の子、という存在。
つまりまあ、好きじゃない。

ボソボソと、食べ終わった焼き鳥の棒を持ったままそんなことを言うと、宗ちゃんはますます首をひねった。

「別にええやん」

「よくないよ」

「だってお前……。もうこの際言うけどな、付き合ったら絶対好きになると思うで、王子のこと」

「えー、なにそれ」

納得がいかない。
もし万が一、仮にそうだとしても、好きじゃない人と付き合い始めるなんてことは私には出来ない。

それにもし今付き合って、すぐに別れるなんてことになってしまったら、バイト中に気まずくて仕方ないに決まってる。
そうなればきっとどちらかがあのコンビニでのバイトを辞めることも充分あり得る。
それは嫌。私の日常を壊したくないし、神月くんにも頑張ってほしい。

「考えすぎやろ」

「人と付き合うのに慎重になって何が悪いの?」

宗ちゃんが呆れたようにため息をついた。
なんだか自分がとっても悪いことをしてしまったような気分になる。

「……私今年で24歳になるんだよ。20代で結婚して子供も欲しいし、軽い気持ちでは付き合えないっていうか」

「じゃあお前は、王子が軽い気持ちで告白してきたとでも思ってるん」

「そんなわけ……!」

とっさに勢いよく反論すると、宗ちゃんは面白そうに笑い出した。

< 22 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop