好き、禁止。
「佐野さん」
「……うん」
「好きです」
「……知ってる」
もう何回目だ。
やめてほしい。それを言われる度に私は、自分が自分じゃないみたいな感覚になる。
心臓をぎゅっと掴まれるような、なんとなく不安になるような気持ち。
こんなの知らない。
「照れてるでしょ。かわいい」
「か……!?」
びっくりして、思わず顔を手で覆った。
可愛いって言われた。年下の後輩くんに。
言われたとおり照れる私を見て、神月くんはなんだか嬉しそうに笑った。
悔しい。どうして私ばっかり振り回されて、神月くんはそんなに余裕なの。
「……好き、禁止にする」
「えっ」
「神月くん、もう私に好きっていうの禁止!」
「えっ、えぇええ!?どうしてですか!?」
「私ばっかりドキドキして悔しいから!いつも振り回されてばっかりで、ムカつくから!」
「…………え」
少し怒ったようにめちゃくちゃなことを言う私を、神月くんは唖然としたように見つめた。
やっぱり少し横暴だろうか。
「佐野さん、それって……」
「な、なに?」
「いえ……」
あれ、ちょっと笑ってる。
どうして少し嬉しそうなんだろう。
私、なにか喜ばせるようなこと言っただろうか?