好き、禁止。


「お、おいしいっ!」

「でしょ!よかった〜喜んでもらえて!」

結局私はハンバーグを、神月くんはチキン南蛮を頼んだ。
チーズのソースがかかったハンバーグはとても美味しくて、フォークとナイフを入れたら肉汁が溢れ出てきて感動した。

「神月くんのも美味しそう!次来た時はそれにしてみよっかなあ」

「他の男と来るのは嫌ですよ」

「……!」

食事中は危険だ。ハンバーグを喉に詰まらせそうになって、急いで水を飲んだ。

まるで何回も告白されているみたいだ。
好きと言わなくても、これだけ気持ちを伝えてくるのだから。

「一切れ食べますか?」

「えっ、いいの?」

「もちろん」

「じゃあ、私のも……」

慌てて一切れ分を取り分けようとすると、いいです、と断られた。

「美味しいもの食べるより、佐野さんが美味しそうに食べてるところ見てるほうが、嬉しいので」

ぼんっと音がしそうな勢いで、顔が熱くなった。
よくもまあ、そんなに次から次へと言葉が浮かぶなあと感心してしまうほどだ。

「あーあ、抱き締めたいなあ」

「なっ……!」

「独り言です」

絶対からかわれてる。私の反応を見て面白がってる。

「佐野さん、わかってると思いますけど。全部本心ですからね」

「……そうですか」

冗談なんかじゃないですよ、と念押ししてくる。わかってます。わかってますよ、ちゃんと。悔しいけど。

せっかくの美味しい食事、しっかり味わって食べたいのに。
私の意識はハンバーグより神月くんへと向いてしまう。

でもやっぱりすごく美味しかったので、また来ようと密かに思った。
……他の男の人とは、きっと来ない。

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