好き、禁止。
次の日。
思惑が外れたというかなんというか。
私の体調はすこぶる悪かった。
「佐野さん、顔!顔やばいんだけど!」
店長にはそう言って驚かれ、パートのママさんには思いっきり心配された。
「大丈夫です。ちょっと寝不足なだけで」
そう言ったものの、これはやばいかもしれないと自分でも思った。
寒気がするのに熱い。耳が遠い。ひょっとすると熱もあるかも。
やっぱり昨日、すぐ帰ったらよかったのかもしれない。だけど、そうは思いたくなかった。
6時に出勤してきた神月くんは、私を見て驚いた顔をしていた。一目見て驚くほど顔色が悪いのだろうか。
ちょうどレジにかかりきりになっている私は、彼が今何を考えているのかを想像していた。
こういう時は案外忙しいほうが気が紛れて助かる。
なかなか途切れない客足を嬉しく思い、仕事に専念することが出来た。
レジ打ち、ドリンク補充、アイス補充、トイレ掃除にチラシ折り。することなんていくらでもある。
神月くんがずっと何かを言いたそうにしていることには気付いていたけれど、聞くわけにはいかなかった。
今、神月くんになにか優しい言葉をかけられたら、きっと私の気は緩んでしまう。そしたら、糸が切れてしまいそうだった。
なんとか10時近くまで働いたころ、店長が心配そうに声をかけてきた。
「佐野さん、もう今日は上がっていいよ。なんか来たときより酷くなってる気がするし」
「え、でも……」
「いいからいいから。神月くんが11時までいてくれるし、もうすぐ石川くんも来るから」
じゃあ、申し訳ないけれどお言葉に甘えようか。そう思った瞬間、騒がしい声がコンビニの中に入って来た。