好き、禁止。
「あー、神月くんいた!」
「ほんとだー!」
そう言いながらレジカウンターに立つ神月くんへ近付いてくるのは、美人な女の子2人組だった。
「え、どうしたの2人とも」
神月くんもびっくりしているようで、慌てているようだった。
「ここでバイトしてるっていう噂聞いたから。働いてるとこ見に来ちゃった!」
「コンビニってなんか意外だけど、何やっててもカッコいいねー」
きゃあきゃあと騒ぐ女の子達は、神月くんと同じ大学の子だろうか。
あきらかに神月くんに好意があって、それを隠すつもりもなさそうだ。
ちらっと神月くんの顔を伺うと、少し困っているみたいだった。
まあ確かにこっちは仕事中なので、見に来られてもそんなに話せるわけじゃないし参っているのだろう。
「ねえ、バイト何時までなの?終わったら遊ばない?」
「あ、いや、それは無理かな。もう遅いし早く帰ったほうがいいんじゃ……」
「えー、せっかく来たのにい。あ、制服姿写メ撮っていい!?」
ああ、やっぱり。
神月くんのまわりには、可愛くて美人な女の子がたくさんいる。
……頭がガンガンする。
でも残念。
彼が、神月くんが好きなのは——。
「……え?」
痛む頭を押さえて、しゃがみ込んだ。突然足から力が抜けたのだ。
私今、何考えた?
神月くんが好きなのは、私なんだよ。
だから残念だけど、神月くんのことは諦めて——。
駄目だ。
視界が狭くなる。目の前が黒く塗りつぶされる。
「佐野さん!」
焦ったように私を呼ぶ声が聞こえた気がするけれど、そこまで。
私の意識は、そこで途絶えた。