好き、禁止。
「開けてもいいですか?」
「うん」
私に承諾を得てからドアの鍵を開けた神月くんは、私の腰を支えながら家の中へと運んでくれた。
そしてベッドの前まで来ると、私をゆっくりと座らせた。
「大丈夫ですか?意識ははっきりしてますか?」
「う、うん。なんかふらふらする」
「ちょっとすいません」
神月くんはそう言って、私のおでこに手を当てた。ひんやりとした手のひらが気持ちいい。
「熱もありますね」
「え、うそ」
「佐野さん、店で倒れたんですよ」
「え……、あー、ごめん、あんまり覚えてない」
「すぐに意識は戻ったみたいだったんでバックルームで様子見てたんですけど寝ちゃって、これは帰って寝かせたほうがいいだろうってなって、家を知ってる俺が送ることになったんです」
「そっか……。ごめん、みんなに迷惑かけて。それに重たかったでしょ?ほんとごめん……」
「佐野さん」
ベッドの縁に座っている私の足元にひざまづいて、神月くんは私の手を握った。
優しく、壊れ物を扱うような手つきに、自分がどれだけ心配をかけたのかを思い知る。
「もしかして、昨日から体調悪かったんですか?」
「え、そんなことな……」
「俺、佐野さんと会えたことで嬉しくて舞い上がってて、全然気付かなかった。……無理させてたことにも気付かなかった。俺のせいで」
「違う!」
自分のせいだという神月くんの言葉を遮る。
それだけは言わせたくなかったのに。昨日私は自分の意思で、神月くんの誘いに乗ったのだ。
「そんなこと言わないでよ。だって私、昨日楽しかった。美味しい料理も食べられて嬉しかった。神月くんとご飯食べに行ったこと、後悔なんてしてないし、したくない」
「佐野さん……」