好き、禁止。

「ごめんね、迷惑かけて。私がちゃんと体調管理出来てなかったせいで。ほんと、ごめんなさい」

そう言って、神月くんが握ってくれている手をぎゅっと握り返した。
神月くんも、さっきより強く握ってくれた。

「謝らないでください。……でも、今度からはちゃんと言ってください。しんどい時は教えてください」

「うん」

「佐野さんが倒れた時、俺本気で心臓止まるかと思った。怖かった」

「……うん」

何故だか、少しだけ泣きそうになった。
神月くんの気持ちが、想いが、繋いだ手のひらから流れ込んでくるみたいに、胸に迫った。

”大切に想ってくれてる人のことは、案外ちゃんと伝わるものよ。”

山田さんの言ってた通りだ。だって、こんなにも伝わってくるから。

「……抱きしめたいです」

「……うん」

繋いでいた手が離れる。
神月くんの手の行方を目で追う。その手が、私の肩を包み込んで行く。

ぎゅうっと、神月くんが私を抱きしめた。
縋るようなその姿が、泣いているように見えた。

まるで、全身で好きだと言われているみたいだった。
切なくて、苦しい。
だけどその苦しさが、甘い。
胸のあたりがきゅっと狭くなる。

私も、今、神月くんを抱きしめたい。
大きくてあったかい背中に、恐る恐る手を乗せた。
神月くんは一瞬びくっと動いたかと思うと、更に腕に力を込めてきた。

「ごめんね、ありがとう」

「佐野さん」

「……」

「佐野さん……」

好きです。
きっと彼は今、心の中でこう言ってる。

< 47 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop