好き、禁止。
「見られると緊張するから……」
思わず顔を隠すように俯いた。
神月くんはベッドのすぐ横に座り込んで、縁に肘をついている。
……本当に王子様みたい。
「佐野さん、俺いま、平気そうに見えます?」
「え……」
「……俺だって、すごい緊張してますよ」
神月くんが照れたように前髪を触る。
少しだけ可愛いと思ってしまった。
「どうして、」
「あのね。す……佐野さんの家に入れてもらって、しかも泊まるんですよ?緊張しないわけないです」
今、”すきなひと”って言いそうになったんだろうな。
好きって言わない約束を、律儀に守ってくれている。
「バイト中と違って他に誰もいなくて、夜道と違って部屋の中で。……2人っきりで」
横を向いていたはずの神月くんが、再び私を見る。
前髪からのぞいた目が、私を見てる。
神月くんの顔が少し赤い。なんだかすごく、色っぽい……ような。
駄目だ、この空気に耐えられない。心臓が張り裂けそうになる。
「はい!プリン食べ終わった!」
「は、はい!じゃああの、薬飲んでください!」
空になったプリンの容器を差し出すと、交換するように薬を渡された。
お互いにぎくしゃくしていて、側から見たら絶対おかしい。
熱、上がってるんじゃないかな。本気で思った。
「横になります、か?」
「うん。そうする」
ベッドに横になると、優しく布団をかけてくれた。
おでこに冷えピタまで貼られて、いよいよ病人らしい格好になってきた。
「明日になったらよくなってるといいですね」
隣で神月くんが言った。
「ごめんね、色々と……」
「駄目です。今は体調のことだけを考えてください」
「はあい」
照れ隠しに布団を口元まで引き上げた。
神月くん、今何を考えてるんだろう。私は、神月くんのことを考えてるんだけど。