好き、禁止。
客足が途絶えた頃。
7時を回ったところで、商品の補充をしようと倉庫部屋へ向かった。
神月くんが何かを言いたげにこちらを見ているのに気が付いたけど、そのまま1人で倉庫の中へと入った。
2人が倉庫へ来てしまうと、フロアが手薄になってしまう。
新人を教育するときなんかを除いて、それはしないように全員が心がけている。
棚の上にある段ボール箱をなんとかおろして、中身をのぞく。
どれを補充すればいいのか確認してから、必要な商品を買い物カゴに入れてフロアへと戻った。
「代わりますよ」
カップ麺の商品棚の前についたとき、そう声をかけられた。
顔を見なくてもわかる。神月くんだ。
「だ、大丈夫!あんまり減ってないしすぐ終わるから」
「でも、佐野さん病み上がりですし。力仕事させるわけにはいきません」
どこまでも優しい言葉をかけてくる。
力仕事だなんて、カップ麺入りの段ボールはそんなに重くないのに。
「ほんとに、大丈夫だから。神月くんはレジにいてくれたら」
出来たら、そんなにそばに来ないでくれたら。
そう考えてから、最低だと思った。
神月くんは私を心配してくれて、気遣ってくれて、多分なにより、大事に思ってくれている。
それを充分過ぎるくらいにわかっているのに。
頭では理解しているのに、行動が伴わない。思い通りにならない。自分で自分のことをコントロール出来ない。
こんなの、私が今までしてきた恋愛とは全然違う。
こんな、天邪鬼な、こんな態度とったことなんて無かった。
「……じゃあ8時の補充は俺がします。いいですね。それから、無理はしないでください」
早口でそう言って、レジのほうへと戻っていった神月くん。
……怒らせただろうか。