好き、禁止。

ということは、神月くんは今年で22歳。私の2つ年下ということになる。
愛想がよくて背が高くて爽やかで、大学でもさぞ人気があることだろう。時給の低いコンビニのバイトよりも、彼ならもっと稼げるバイトが出来そうだな、と思ってしまった。

「佐野さん今彼氏いないんだったよね。付き合っちゃったら?」

「……どうしてそうなるんですか」

「さっき2人が並んで立ってるの見てたら、お似合いだなーと思ったから」

「やめてくださいよ……」

楽しそうに笑っている店長を横目で見て、思わずため息が出た。
神月くんほど見た目も中身もよさそうな人ならきっと、彼女の1人や2人いるだろう。ましてや大学生なら、周りに可愛い女の子だっていっぱいいるはずだ。

それに私にだって理想はある。
3歳くらい年上の、スーツ着て仕事してる人。仕事の日は前髪を上げておでこを見せてセットしていて、休みの日は目にかかるくらいの前髪を無造作におろしている人。
そんないかにも大人の男らしい人が、私の理想。年下の男の子にときめいたことなんて、今まで生きてきて一度もないのだ。



お似合いだという店長の言葉が頭の中に残る。

早々に内定をもらって就活に成功している神月くんと、せっかく大学を卒業したのに就活もせずにコンビニでのバイトを続けているフリーターの私。
年上なのになんだか情けなくて、お似合いだなんてとても言えない。

けれど別に、今の生活に不満があるわけでもない。
私は今の、自由で縛りのない生活をわりと気に入っているのだ。

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