好き、禁止。

次の日、いつも通り午後5時に出勤すると、私の次にここでのバイト歴が長い石川宗佑(いしかわ そうすけ)くんがいた。

「あれ、宗ちゃん。夜勤じゃないの珍しいね」

「おー灯里。まあたまにはな」

長い間一緒に働いていて、同い年ということもあって私と宗ちゃんは仲がいい。プライベートでも飲みに行ったりしているうちに、お互いに下の名前で呼び合う仲にまでなっていた。
同い年だけど宗ちゃんはまだ大学生。2回留年したせいで、大学6年目だ。

「そろそろまた飲み行こや。灯里がバイト終わってからでもええし」

「そうだねえ。この前行った居酒屋よかったし、あそこまた行きたい!」

「あ?どこやったっけそれ」

宗ちゃんは大学進学のために関西から出て来たらしく、私にはなじみのない関西弁で話す。
宗ちゃんらしいそのイントネーションが、私はちょっと気に入ってたりする。


「そういえば新人入ったらしいな?俺まだ見てへんから知らんねんけど」

「あ、そうそう昨日から。今日も6時からシフト入ってたんじゃないかな?」

バックルームに貼ってある出勤表を確認してみると、思ったとおり今日も神月くんは出勤のようだった。
あと1時間で来るはずだ。

「どんなやつ?大学生?」

「うん大学生。どんなやつ……うーん、高級メロンみたいな感じ?」

「なんやそれめっちゃ洒落てんな。じゃあ俺は?」

「宗ちゃんは、福神漬けって感じ」

「福神漬け!?」

「ほら、見た目は濃いんだけどなんか懐かしい味っていうか」

宗ちゃんが横で口をパクパクさせて反論したがっているみたいだ。
だけど今日も、この時間から忙しくなる。自動ドアが開いたのを見て、いらっしゃいませ、と声を出した。

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