好き、禁止。
「……ほんまや高級メロンや」
「……?」
出勤してきた神月くんを一目見て、宗ちゃんがぼそっと言った。
「ぶふっ」
唖然とする宗ちゃんの目の前で、何のことかわからないけどなんとなく笑顔を作っている神月くん。2人を見ているとつい笑ってしまった。
この2人、なんだか正反対だ。
「おはよう、神月くん」
「佐野さん!おはようございます」
「今日も頑張ろうね」
「はい!」
今日は宗ちゃんもいるから心強い。たくさん仕事を教えることが出来そうだ。
肝心の宗ちゃんは神月くんに「王子って呼んでもええ?」とか言って困らせているけれど。
「じゃあまずは、外の駐車場にゴミが落ちてないか見てきてくれる?はいこれ、箒とちりとり」
「わかりました!」
客じゃなくて私達にまで惜しみなく笑顔を振りまいて、神月くんが意気揚々と外へ向かった。
昨日店長が言っていたように、本当に彼目当ての客が増えそうな気がするから怖い。
「イケメンやなー。あれはずるいわ。チートやわ」
「店長もイケメンって言ってた」
「そらそうやわ。灯里も思うやろ?」
「んー……でも私のタイプじゃないかな」
「!お前、おこがましいで!なんてやつや贅沢な!」
「う、うるさいなーもう」
そりゃあ、顔だけ見たらイケメンだとは私も思う。思うけども、タイプではない。それだけの話だ。
年下だし。スーツじゃなくて、コンビニの制服のジャケットと黒いズボンだし。
ただのバイト先の後輩。
この位置づけでしかないのだ。