好き、禁止。

忙しい時間帯が少し落ち着いた7時頃は、カップ麺の補充をする時間だ。

「神月くん、教えるから来て」

「はい」

店内にはバックルームとはまた別に倉庫部屋があって、さらにその中にはウォークインという場所がある。冷蔵庫の部屋という感じで、食料品のストックが置いてあったり、店内にあるジュース置き場の裏側とつながっておりここから補充出来るようになっている場所だ。

「この倉庫部屋にお菓子とかカップ麺とか、常温保存のストックがあるの。おでんの具とか肉まんのストックはそっちのウォークインの中ね」

「へえ、すごい。こんな風になってるんですね」

キョロキョロと部屋の中を見渡す神月くんを見ていると、自分がここでバイトを始めた頃のことを思い出した。当時私に色々教えてくれた先輩たちは、もう誰もいない。就職したら辞めてしまう人ばかりなので、入れ替わりも激しいのだ。

「この棚にある段ボールがカップ麺。慣れてきたら先に売り場を見て、何を何個補充すればいいか覚えてから来ると時間短縮になるよ」

「なるほど」

「開けてある段ボールの中身から使ってね。潰れないように一番上に積んであるから」

棚の上のほうに積んである段ボール箱に、背伸びをしながら手を伸ばす。なんとか下のほうに手をかけて、頭の上に落ちてこないように気をつける。
……いつもならこうなのだけど、今日は違った。

「俺が取ります」

「えっ……」

手を伸ばしている私の後ろから覆いかぶさるように、神月くんが棚へと手を伸ばす。
その手を目で追っていると、いとも簡単に段ボールを持ち上げて床へと降ろした。

「これで合ってますよね。……佐野さん?」

「えっ、あっ、合ってる。ありがとう」

びっくりした。女の子扱いされたような気がして、背中に神月くんが来ている制服のジャケットが当たって、少しだけドキッとしてしまった。

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