28時間
遥がきれいに装った甲斐あってか、慎一の雰囲気のおかげか、ジュエリー店では奥の個室に通され、丁重な扱いを受けた。

ゆったりしたソファに腰かけて、サンプルをいくつか見せてもらい、店員の説明を聞く。

他人のしている結婚指輪は、どれも似たように見えていたけれど。
実際は違うのだなと、遥は思った。

デザインの多様性はもちろん、はめてみると、似合う・似合わないがある。

「遥が気に入ったのがいい」

と慎一が言ってくれたので、結婚指輪は遥の指に一番似合うデザインに決めた。

華奢なプラチナだ。

婚約指輪は遠慮したのだが、

「あった方がいい」

と慎一が主張し、買ってもらうことになった。

誕生石のダイヤを選ぶ。

ビロード張りのトレイに、透明なダイヤがきらきらと。

綺麗だ。

遥が選んだのより1ランク上のものを、慎一が指定した。

仕上がりは1か月後。


店を出て歩きながら、遥が言った。

「指輪って、時間かかるんですね」

ドラマや映画では、その場で買っているように見えていた。

「受注生産だから」

「大人の買い物、という感じで、とても楽しかったです。
ありがとうございます」

「どういたしまして。喜んでもらえて良かった。さて次はどうしよう。あと2時間半あるよ」

慎一が聞くと、遥は

「おなか空きましたね。ランチ行きましょう」

と答えた。
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