過保護な副社長はナイショの恋人
「では、副社長。お先どうぞ。僕たちは、次に乗りますので」

雅也先輩は、先を副社長たちに譲る。私もその気遣いには賛成で、先輩の後ろへ下がった。

「ありがとう。気を遣わせてすまない。社長、行きましょう」

副社長は蓮見社長を促すと、エレベーターへと乗り込んだ。

「ビックリしたなぁ。まさか、副社長に出くわすとは思わなかったよ」

大きくため息をついた先輩は、やれやれといった感じで、エレベーターの呼び出しボタンを押した。

「本当ですよね。しかも、一緒にいた男性の方、社長でしたよ? スゴイ……」

「あれ? 咲実ちゃん、蓮見社長を知らないのか?」

「え?」

意外だとでも言いたそうな先輩に、私は首を振った。そんなに有名な人なのか……。

「大手総合商社の社長だよ。よく経済関係のニュースで、インタビューを受けているけどな。見たことないか?」

「あ! そう言われてみれば……」

景気の動向やら、株価の変動など、なにかとテレビで見かける。あの社長だったなんて、実物はかなり威圧感があって尻込みしてしまった。

「それに、一緒にいたのは、咲実ちゃんとは同級生になる真依子(まいこ)さん。ほら、有名女子大出身で、ミスキャンパスに選ばれた人だよ」

じれったそうに先輩に、私はなんとか思い出してみる。言われてみれば、そんな人がいた。

「えっと……、社長令嬢だと、話題になった方ですよね? たしか、私たちの大学でも有名でした」
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