過保護な副社長はナイショの恋人
「そうそう。彼女だよ。副社長と一緒にいたということは、恋人なのかな」

恋人……か。もしかすると、副社長室の花は、真依子さんからの贈り物かもしれない。

「キレイな方でしたね。さすが、ミスキャンパス」

さらに社長令嬢なのだから、副社長の恋人としてはピッタリかもしれない。

松谷副社長は叩き上げといっても、仕事の有能さは業界を超えて有名だ。

それこそ、経済系の雑誌にたびたび取り上げられている。それに、たしか実家は金持ちとか噂で聞いた。

少なくとも、私のような立場の女性には、縁遠い人に間違いない。

「キレイだったな。でも俺には、咲実ちゃんの方が可愛く見えるよ」

エレベーターが開き、乗り込みながら先輩が言った。

「先輩、気を遣わなくていいですから」

照れ隠しにツッコミ半分で応えると、先輩は微笑んだ。

「ホントだって。咲実ちゃんは、派手なタイプではないけど、目鼻立ちが整っていて、女の子らしいじゃないか。真依子さんとは、違う魅力があるよ」

「あ、ありがとうございます……」

先輩とは、出会って十年近くなるけど、こんなことを言われたのは初めて。

先輩たちのなかでは、一番私を可愛がってくれていたけど、ここまで言ってくれたことはない。

さりげない言葉として、受け取っていいんだよね……? 気恥ずかしさを感じながら、普段どおり先輩に笑顔を向けた。
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