過保護な副社長はナイショの恋人
バーに着くと、さっそく店の前で入店チェックをされる。黒スーツを着た男性が、紹介状を確認し、やっと店に入ることができた。

そこは、カウンター席とソファー席がある広い店内で、間接照明で程よく暗い。

インテリアは洗練された黒系で統一されていて、高級感に溢れていた。

副社長の近くだと、気まずいなと思い店内を見回しても、姿が見当たらない。蓮見社長も、真依子さんもいなかった。

「心配しなくても、副社長たちは個室じゃないかな?」

私の様子に気づいた先輩が、さりげなく声をかける。さすが先輩は、私の行動を気づいていた。

「そうなんですか? 個室なんてあるんですね」

「みたいだよ。ここは、有名人もお忍びで来るらしいから」

「へぇ……。世界が違う気がします」

苦笑しながら、案内されたソファー席へ座る。談笑の声はあっても、全体的に落ち着いた雰囲気だ。

カップルらしき人たちや、接待らしきビジネマンがいる。それも、ステータスの高そうな人たちばかりだった。

「じゃあ、咲実ちゃん。なにか飲もうか?」

「はい」

お酒と軽食を頼み、先輩と乾杯をする。最初は甘いカクテルを、ふたりで堪能した。

「すごく美味しいですね。品のある味で……」

「そうだな。さすが、会員制バーだけあるよ」

先輩も満足そうに軽々と一杯目を飲み干すと、次を注文した。

「咲実ちゃん、遠慮するなよ。今夜はおごり」

「え? でも、それは悪いです……」

二杯目を注文しようか迷っていると、そんな風に声をかけられた。

「遠慮するなって。学生の頃だって、そうしてただろ?」
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