過保護な副社長はナイショの恋人
先輩は、いつも後輩の面倒見が良く、ごちそうをしてくれていた。せっかくの好意を、無下にするのも心苦しいから、ここは甘えることにする。

「ありがとうございます、雅也先輩。じゃあ、お言葉に甘えて……」

次のカクテルを飲みながら、仕事の話や学生の頃の話をする時間は、私にとっては癒しになっている。

しばらく会っていない他の先輩たちの近況報告など、聞いていて安心できる話題ばかりだ。そんな昔話などをしていると、あっという間に時間は過ぎていった。

「咲実ちゃん、そろそろ帰ろうか? 明日も仕事だもんな」

「そうですね。その前に、化粧室に行ってきてもいいですか?」

「ああ、もちろん。待っとくよ」

あとはタクシーで帰るだけといっても、メイクやヘアスタイルのチェックくらいはしておきたい。

化粧室は店内奥にあるけれど、その途中にメイク直しルームがある。

「スゴイ……。こんなのもあるんだ……」

感心しながらその部屋に入ろうと、ドアに手をかけたときだった。

「梶田さん」

声をかけられたと同時に、手を重ねられた。驚いて肩越しに振り向くと、副社長が立っている。

「ふ、副社長……?」

呼び止められたことはともかく、どうして手を重ねられているんだろう……。
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