過保護な副社長はナイショの恋人

「えっ？ そうかな……？」

あまり意識をしたことがないから、分からなかった。首をかしげると、あやめは声を潜めて言った。

「咲実は仕事が早いし、なにより下心がないもんね。きっと、副社長からの評価が高いのよ」

「下心って……」

戸惑いながら笑顔を浮かべると、あやめはかなり真面目な顔つきで私をジッと見た。

「だって、周りのほとんどが、松谷副社長を狙ってるのよ？ 本社勤務をいいことに、副社長を見かけるたびにワントーン声を高くして、話しかけてさ……」

嫌悪感たっぷりに、彼女は首を横に振っている。たしかに、そのとおりで、副社長はまるでアイドルかのように、見かけられるたびに黄色い声を飛ばされている。

だけど当の本人は、そんなことは気にも留めず、常にポーカーフェイスだ。挨拶こそ返してくれるものの、ぶっきらぼうな口調だし、それでもみんな負けずに副社長にアプローチしている。

「私も、松谷副社長は憧れだよ？ 仕事ができて素敵だから」

「咲実は下心のない憧れじゃない。きっと、そういう部分を、副社長サイドは見抜いているんだと思う」

あまりに真剣に言うから、ついクスッと笑ってしまった。

「どっちにしても、仕事で評価されるのは、とても光栄だよ」