過保護な副社長はナイショの恋人
「えっ? 副社長がですか? 分かりました……」

なんだろう。わざわざ、副社長自ら私に頼みごと? 普段なら、そんな呼び出しはないのに。

不思議に思いながらドアをノックし部屋に入ると、デスクにいる副社長が視線を私に向けた。

「失礼します……」

「ああ、梶田さん。ごめんね、一、二分ほどいい?」

「はい、大丈夫です」

やっぱり、昨夜のことはなかったことになっているんだろうな……。まるで淡々とした様子で、いつもの副社長だ。

「梶田さん、今週の金曜の夜は空いてる?」

「え? はい。特に予定はありませんが……」

「じゃあ、金曜日でいいよね? 昨夜話したバーのこと」

ニッとした副社長に、私はア然とした。

「まさか、本気だったんですか?」

「当たり前だろ? 昨夜は連絡先を聞かなかったから、ここまで来てもらったけど……」

と言いながら、副社長は立ち上がり私の側へ来た。

そしてスーツの胸ポケットから、スマホを取り出している。

「梶田さんの番号を教えてくれる?」

「わ、私の番号ですか⁉︎」

話がどんどん進んでいき、戸惑う私に副社長は涼しい顔をした。

「そうだよ。じゃないと、連絡が取れないだろう? 毎回、副社長室に呼び出すわけにいかないし」

「それは、そうですけど……。私まだ、金曜日のお約束をしたつもりはないんですが……」
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