過保護な副社長はナイショの恋人

「これを、副社長にお渡ししてもらえますか？ 私の電話番号です。さっき聞かれたのですが、お仕事の電話が入ったので、お答えできないままで……」

不審がられるかと不安だったけど、荒木さんは予想外にニコリと受け取った。

「かしこまりました。のちほどお渡ししておきますね」

「よろしくお願いします」

会釈をして、今度こそ副社長室をあとにする。副社長の誘いの真意は分からないけど、もし軽い気持ちなら、次からはお断りしよう。

さすがに同じ会社の一社員に、やましい行為はしないだろうし。一度くらいなら、誘いを受けても大丈夫なはず。

電話がかかってくるとも限らないし、あまり深く考えないでいようと思っていると、その日の夜にさっそく、知らない番号から電話がかかってきた。

「これって、副社長の番号なのかな……」

アドレスにない携帯番号からの着信に、一瞬ためらう。だけど昼間、荒木さんに番号を預けたのだし、副社長からかかってきたと思って間違いないだろうな……。

「もしもし……」

恐々出ると、電話口から低く色気のある声が聞こえた。

「梶田さん？ 俺、松谷だけど」

やっぱり副社長だった……。本当にかかってきたと思ったら、ドキドキしてくる。

「お、お疲れ様です。副社長、もうご自宅ですか？」