過保護な副社長はナイショの恋人
「なにも変わりませんよ……」

積極的な副社長に、心が揺さぶられる。ただの軽い誘いではないだろうと、それは分かってきた。

「そんなの分からないだろ? 見せてくれないか、俺に」

「プライベートな私を……ですか?」

「ああ。いいだろ?」

低い副社長の声は、聞き惚れてしまいそうになる。そこまで言うなら、これ以上頑なに拒む理由がない。

「分かりました。金曜日、ご一緒させてください」

と答えると、即反応が返ってきた。

「良かった。じゃあ、仕事を早く片付けて電話をするから」

副社長はそう言って電話を切った。意外とサッパリした感じで拍子抜けする。

あんなにしつこい感じだったのに、いざ誘いを受けるとあっさりしすぎじゃない?

やっぱり、副社長のことはよく分からない……。

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「そわそわしてるね、咲実。なにかあるの?」

金曜日の終業間近、あやめにそんな指摘をされてドキッとする。

普段通りにしているつもりだったのに、態度に出ていたみたいだ。

「ううん。なんにもないよ。週末だからかな? 気が散ってるのかも」

苦笑いをして誤魔化す。副社長とは、電話で話をして以降三日間は、顔を合わせていない。

それが余計に緊張しているのか、変に意識をしていた。

「そうなんだ。てっきり安部さんとデートかと思ったのに」
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