過保護な副社長はナイショの恋人
「先輩と⁉︎ なんで、そうなるの?」

まさかの雅也先輩の名前が出てきて驚く。するとあやめはニヤッとした。

「知らぬは本人ばかりなのね。けっこう有名よ。安部さんって、絶対に咲実が好きだってことが」

「雅也先輩が? そんなわけないじゃない。私たち、学生の頃から恋愛抜きの関係を続けてるのに」

どこでそんな噂が広まっているのか。だいたい先輩は本店勤務で、私は本社勤務。

普段は、顔を合わせることのない方が多いというのに……。

「安部さんって、本店勤務の人たちに、けっこう咲実の話をしてるみたいよ」

「私の話を?」

「うん。とても仕事熱心な可愛い後輩って。だからみんな、安部さんは咲実が好きだって噂してるみたい」

大学生の頃でも、そんな噂はなかっただけにア然とする。だいたい雅也先輩が、みんなが思うような深い意味で言っているのかも疑問だ。

「それは、さすがに違うと思うけど……」

と小さく反論すると、あやめは声を潜めた。

「ねえ、咲実って、本当は安部さんを追いかけて、この会社に入ってきたんでしょ?」

「えっ⁉︎」

さすがにそれは大きな勘違いで、業務中だということも忘れて声を上げる。

すると背後から、わざとらしい咳払いが聞こえた。
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