過保護な副社長はナイショの恋人
あやめにそう言い残して、副社長室へ向かう。ここは七十階建てのタワービルで、企業のオフィスだけでなく、商業施設なども入っていた。
私たち総務部は六十階に、そのひとつ上の階に副社長室と社長室がある。
社長室とは反対奥にある副社長室に向かい、茶色のドアをノックした。
「はい」
と出てきたのは、副社長秘書の荒木さんだ。荒木さんは三十代後半のインテリ系イケメンで、黒ぶちメガネをかけている。
涼しげな目元を細めた荒木さんは、私に中へ入るように促した。
「梶田さんが資料を作ってくれたんですよね?」
「はい。部長に相談しながら作ったのですが、不都合があればご指摘ください」
なにせ役員会議資料だから、抜けているところなどあったら大変だ。副社長の最終確認は、緊張してしまう。
「分かりました。では、これは梶田さんから副社長へお渡しできますか?」
「え? は、はい」
だいたい荒木さんから渡してくれるのに、今日は副社長に直接手渡しなんだ……。
仕事で何度か顔を合わせているとはいえ、かなり緊張してしまう。
なにせ副社長は、仕事がデキる分、とにかく厳しいからだ。
それでも私は、若くして副社長へ大抜擢された松谷副社長を、心から尊敬して憧れていた。
私たち総務部は六十階に、そのひとつ上の階に副社長室と社長室がある。
社長室とは反対奥にある副社長室に向かい、茶色のドアをノックした。
「はい」
と出てきたのは、副社長秘書の荒木さんだ。荒木さんは三十代後半のインテリ系イケメンで、黒ぶちメガネをかけている。
涼しげな目元を細めた荒木さんは、私に中へ入るように促した。
「梶田さんが資料を作ってくれたんですよね?」
「はい。部長に相談しながら作ったのですが、不都合があればご指摘ください」
なにせ役員会議資料だから、抜けているところなどあったら大変だ。副社長の最終確認は、緊張してしまう。
「分かりました。では、これは梶田さんから副社長へお渡しできますか?」
「え? は、はい」
だいたい荒木さんから渡してくれるのに、今日は副社長に直接手渡しなんだ……。
仕事で何度か顔を合わせているとはいえ、かなり緊張してしまう。
なにせ副社長は、仕事がデキる分、とにかく厳しいからだ。
それでも私は、若くして副社長へ大抜擢された松谷副社長を、心から尊敬して憧れていた。