過保護な副社長はナイショの恋人
なんとか頑張り、一時間で準備を済ませると、一翔さんに電話をする。

マンションの場所を説明すると、二十分ほどで来てくれた。

「咲実、お待たせ。乗って」

「は、はい……」

車で迎えに来てくれた一翔さんは、運転席の窓から顔を出す。

彼の優しい笑みより、車が気になってしまい、恐る恐る助手席のドアを開けた。

一翔さんの車は、シルバーのメタリック調で、有名な高級外車だ。さすが、乗っている車も、普通じゃない。

そもそも、私はこんな高級車に乗ったことはないし、左ハンドルも初体験。

緊張しながらシートベルトを締めると、一翔さんが声をかけてきた。

「なんか緊張してる？」

口角を上げて、どこか楽しそうだ。そんな彼に、私は唇を尖らせた。

「してますよ。一翔さんと付き合うようになったことさえ、リアル感がないんです。それに、こんな高級車で迎えに来てもらって……」

「なるほど。リアル感がない……か。じゃあ、俺の彼女になったってこと、実感してもらおうかな」

「えっ？」

ニッとした一翔さんは、すぐに車を走らせた。それにしても、私服の一翔さんを初めて見たけど、なんてかっこいいんだろう。

ネイビーのシャツは上のボタンを外し、色気のある品ある着こなし。さらに同系色のパンツで、センスがある。

プライベートの彼を垣間見てドキドキしていると、ふと話しかけられた。

「咲実の今日の格好、普段と違っていいな。女の子らしくて、可愛い」

「あ、ありがとうございます……」

気がついてくれたんだ……。普段は会社ではモノトーンや抑えめのオフィスカジュアルだけど、今日は白いカーディガンにターコイズのカットソーを合わせている。

スカートも白いシフォンで、日頃とは違い明るい感じにしてみた。

分かってくれて、声をかけてもらえたのが嬉しい……。
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