過保護な副社長はナイショの恋人
「ありがとうございました」

女性店員は深々と頭を下げ、入口まで見送ってくれる。途端に存在感を増した左手薬指に違和感を持ちながら、車へと戻った。

「一翔さん、ありがとうございました。こんな高価なもの……。大事にしますから」

「いいよ、何度もお礼を言わなくて」

一翔さんはシートベルトを締めながら、私に微笑んだ。それにしても、手際のいい買い物で、嬉しい反面少し複雑に感じる思いもあった。

「一翔さん、さっきのお店、常連なんですか?」

店に入った途端、店員さんはすぐにVIPルームに案内していたし、一翔さんのお父さんのことも知っているみたいだった。

「親父がね。俺はたまに、母にプレゼントを贈るくらいで、恋人に指輪を贈ったのは咲実が初めてなんだけど……」

と言われ、黙っていると、一翔さんはクスッと笑った。

「信じてないだろ?」

「はい。まったく。そんなわけ、ないだろうなって……」

素直にそう言うと、一翔さんはさらにクックと笑った。

「本当だよ。正直、今までこれほど、惹かれる女性に出会ったことがなかった。不思議なほどに、咲実を自分だけのものにしたいと思ってしまってる……」

一翔さんは私の頬にそっと触れ、唇を重ねた。いくら周りに人がいないとはいえ、大胆にも舌を絡めてくる。

「ん……。一翔さん。誰かに見られるかも……」
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