過保護な副社長はナイショの恋人
和食の贅沢なコースを堪能したあとは、車で彼の家へ向かう。

話によると、タワーマンションの最上階に部屋があるとかで、驚きを隠せずため息がもれた。

駅近にある一翔さんが住むマンションは、五十二階建て。通りを一本越えればオフィス街で、便利な場所にある。

一翔さんは車を立体駐車場に停めると、さっそく部屋へ向かった。

マンションの入口は、ホールにソファーが置かれていて、ちょっとしたリビングのようでオシャレだ。

感心しながらエレベーターに乗り、最上階へはあっという間に着いた。

「夜になれば夜景がキレイなんだけど、まだ夕方だから、街の風景が見下ろせる程度かな」

彼はカードキーで玄関ドアを開けると、私を中へ促す。

廊下や玄関の床は大理石張りで、目を見張るものばかりだ。

「お邪魔します……」

緊張しながら靴を脱ぎ、廊下を進むと広いリビングに着いた。総ガラス張りで、外の景色がよく見える。

インテリアはモノトーンで統一されていて、シンプルで都会的な雰囲気だ。一翔さんのセンスの良さが分かる。

「見晴らしがいいんですね。こんなに中心部が見渡せるなんて……」

どこかに私たちの会社も見えそう。思わず窓に駆け寄り、外を眺めた。

「ここなら、少しは気に入ってもらえたかな」

一翔さんは隣に立って、一緒に外を眺めている。外資系証券会社の叩き上げ副社長、その肩書きだけで近寄りがたいイメージはあるのに、素の一翔さんはこんなにも優しいんだ……。

「咲実、どうかした?」

ジッと横顔を見つめていると、気がついた彼がこっちを見た。
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