過保護な副社長はナイショの恋人
「ごめん。そういうつもりじゃなかったんだ。純粋に、咲実とふたりきりになりたいだけだったのに」

「一翔さん……」

一翔さんは私の体を離すと、ソファーへ座った。私も同じく隣に腰を下ろす。

すると彼が、「そういえば……」と口を開いた。この微妙な雰囲気を変えようとしているのが分かる。

「来週の火曜日から、ニューヨークへ出張なんだ。二週間、会えないのは寂しいんだけど」

一翔さんは、そう言って苦笑した。二週間もニューヨークへ出張……?

たしかに、一翔さんは海外出張が多い。それは知っていたけど、いざ言われると動揺している自分がいる。

「二週間……? じゃあ、プライベートで会えるのは、今日と明日だけですか?」

「いや……。実は、明日は朝から仕事で、今日だけなんだ。だから、誘ったんだけど」

今日だけって、そんなに仕事が忙しいんだ。

「そうだったんですね。分かりました……」

“頑張ってください”って、もう一言くらいかけたいのに、心のなかに寂しさが広がる。

二週間って、けっこう長い。次に一翔さんが帰ってきたときには、月末になってるんだ……。

「咲実?」

落ち込み気味の私を不審に思ったのか、一翔さんが声をかける。自分でも意外なくらいに、彼に会えないことにショックを受けていた。

「寂しいなって……。明日も明後日も、二週間先まで会えないんですね」

そう呟いた瞬間、一翔さんの顔が近づいてきて、キスをされた。
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