過保護な副社長はナイショの恋人
花瓶は、有名な高級ブランドのガラス瓶だ。テレビや雑誌で見たことがある。

「キレイなお花ですね。副社長は、お花が好きなんですか?」

ふと口にすると、副社長はパソコンを見据えたまま、無愛想に答えた。

「いや、あれは贈り物。別に俺の趣味じゃない」

「そうですか……」

贈り物って、まさか女性? 花を贈るなんて、ある程度親しい間柄じゃないと、なかなかしないと思うけど……。

そういえば、副社長は恋人がいるのかな。独身なのは間違いないけど、彼女がいるのかまでは知らない。

みんな当たり前のように狙っているけど、あの花瓶の花は、かなり怪しい気がする。

わざわざ、趣味じゃないものを飾る? それによく目立つ窓辺に飾っているし……。

「花が気になるか?」

どうやら私の視線に気づいていたらしく、副社長はぶっきらぼうに言った。

「あ、あの……。とてもキレイな花だなって、思ったものですから。それより、資料はどうでしたか? 修正があれば、すぐに直します」

あまり話を深掘りされないようにしよう。確認を待ちながら、余計なことを考えていたと知られるのもきまりが悪い。

すると、メモリを抜き取った副社長が、私にそれを返した。

「いつもどおり、よく出来てる。梶田さんは、仕事の理解力が高いな」
< 5 / 94 >

この作品をシェア

pagetop