過保護な副社長はナイショの恋人
約二十人の感嘆のため息とは対象的に、私は青ざめる。お父さんが社長で、おじいさんが名士って、やっぱり“普通”じゃない。

「それに、二井(にい)商事の蓮見社長の娘さんと、結婚の話があるらしいよ?」

「えっ⁉︎」

思わず声を上げた私に、先輩は続けた。

「ほら、咲実ちゃん、覚えてるだろ? 真衣子さんだよ。彼女と、いずれ結婚するらしい」

ちょっと待って。どういうこと……? 頭の中は、確実に混乱している。それはみんなも一緒で、身を乗り出すように先輩に矢継ぎ早に質問していた。

どうやら、先輩には二井商事に勤める友達がいて、彼から聞いたらしい。二井商事では、最近その話題でもちきりだとか。

真衣子さんも社長令嬢で家柄がいい。そんな彼女と一翔さんの結婚には、両家のお父さんが乗り気だと噂されているということだった。

吉原さんももちろんショックを受けているし、特に本社の女子社員はみな呆然としている。

だけどそれは、私も同じだ。今は、一翔さんはニューヨークで、真実を聞くことができない。

嘘であってほしい。ただの噂話だと、自分に言い聞かせてみても、動揺は隠せなかった。
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