過保護な副社長はナイショの恋人
結婚の噂が本当だったことに、ショックを受ける自分がいる。それも、真衣子さんから別れろと言われるなんて……。

「別れません……。真衣子さんと結婚するかどうか、決めるのは一翔さんですから」

昨夜、雅也先輩の強引なアプローチから、助けてくれたのは一翔さんだった。

あのとき、心から思った。私は、一翔さんが本当に好きなんだと。彼が戻るまでの二週間を、とても長く感じているくらいなのに。

キッパリ真衣子さんに言うと、彼女は苦々しい顔をしている。

「だけど、私たちの結婚は、少なからず一翔さんのお父様の利益に繋がるのよ？ あなたとの交際が許されるわけがないじゃない」

なるほど……。お金持ち同士の結婚の事情ってことなのかな。一翔さんのお父さんは銀行の社長で、おじいさんは名士だもんね。

社長令嬢の真衣子さんとの結婚には、多くの利益が絡んでいるんだ……。でもーー。

「一翔さんは言っていました。真衣子さんは、恋人でもなんでもないと。彼がそう言っている以上、別れる理由なんてないですから」

と言うと、真衣子さんは顔を赤くした。怒りに満ちた表情に近い。

「まあ、いいわ。せいぜい、今のうちに楽しんでなさい。最後に彼をもらうのは、私だから」

そう言うと真衣子さんは立ち上がり、さっさと店を出ていった。

「もう……。なんなのよ。ビックリした」

程なくして、彼女が注文したコーヒーがやってくる。湯気を立てるカップを眺めながら、自分の心を落ち着かせた。

突然の宣戦布告に結婚話で、心は激しく動揺している。私、まだ一翔さんについて、知らないことばかりなんだな……。

そこに気づいて、少し切なくなった。
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