過保護な副社長はナイショの恋人
「お帰りなさい、一翔さん。落ち着かなくて、夜景を見てたんです」

「だから、電気まで消していたのか」

クスッと笑った一翔さんは、リビングの電気を消しに戻った。

「こういう見方をしたのは初めてだな。暗いなかで眺める方が、ロマンチックといえばそうだけど……」

と言いながら、私を後ろから抱きしめてくる。胸の高鳴りでいっぱいになりながら、平静を装った。

「そうですよね。私もそう思って、電気を消してみたんです……」

「でも俺は、夜景より咲実を見たい。こっちを見て」

一翔さんは優しく肩を掴んで、振り向かせた。彼の温もりと言葉に、頭はボーッとしてくる。どこか夢心地で彼を見上げた。

「安部くんに告白された?」

「え……?」

やっぱり噂を耳にしたんだ。一瞬にして我に返った私は、気まずい思いが込み上げる。

それが顔に出てしまったらしく、一翔さんは眉間にシワを作った。

「まさか、本当にそうなのか……? たまたま荒木から聞いて、半信半疑だったけど」

「……はい。でも、お断りはしてます」

そもそも先輩が告白を覚えているかも怪しいけど……。とはいえ、一翔さんはずっと先輩にこだわっていたから、どう思うだろう。

チラッと一翔さんを見ると、笑顔は消えてジッと私を見ている。

「一翔さん?」

「だから言ったろ? 安部くんが咲実を好きなことくらい、最初から分かってた。彼には、絶対に渡さない」

そう言った一翔さんは、力強く唇を塞いだ。

「ん……。苦しい……」

舌を絡められ、唇が濡れていく。

「咲実が悪いんだろ? 安部くんに隙を見せるから」

「隙なんて、見せてません……」
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