過保護な副社長はナイショの恋人
そんな言い訳は、彼にはどうでもいいようで、温かくて大きな手がするりと、服の中へ伸びてきた。

「あっ……。ちょ、ちょっと一翔さん、ここ外ですよ……」

「大丈夫。誰かに見られる場所じゃないし、隣もない。声も聞かれないよ」

耳元で囁くように言った一翔さんは、構わず手を体に這わせる。

「ん……」

甘い声を抑えきれない私に、一翔さんは続けた。

「自分が嫉妬で燃えるタイプだって、初めて知った」

その言葉の割には、余裕たっぷりな口調だ。むしろ、恥じらいながらも抵抗できない私を、楽しんでいるようにも見える。

「一翔さんってば……」

すっかり彼のペースにハマった私は、その胸に体を預けた……。

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コンコン……と副社長室のドアをノックすると、笑みを浮かべた荒木さんが出てきた。

「お疲れ様です、梶田さん。資料をありがとうございました。副社長が、なにかご用事があるらしく……」

「副社長がですか? 分かりました。お伺いしてきます」

荒木さんはニコニコと、一翔さんの部屋のドアをノックした。なんだか、今日の彼は様子が変だ。

いつも以上に笑顔になっている。怪訝な顔で荒木さんを見ると、彼はボソッと言った。

「副社長となにかありましたか? 梶田さんの話をされるときの副社長が、普段と違って楽しそうなので」
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