過保護な副社長はナイショの恋人
「えっ? そんなわけないですよ。私が副社長となにかあるなんて、そんな……」

慌てて否定してみたけれど、余計に不審だったかもしれない。たまらず顔をそらす私に、荒木さんはクスッと笑った。

でも、そのことには気づかない振りをして一翔さんの部屋に入ると、彼は真剣な顔でパソコンを見ている。

「失礼します……。副社長、なにかご用事ですか?」

本当に嬉しそうに私の話をしていたのかと疑うくらいに、一翔さんはいつもどおり仕事をしている感じだ。

私の問いかけにも、無愛想に「ああ、ごめん。ちょっと待ってくれる?」と応えている。

部屋をチラリと見渡すと、いつかの花がなくなってる……。それに、それ以上飾っていないということは、一翔さんの趣味ではなかったんだ。

もしかして、真衣子さんからの贈り物とか……?

「よし! 終わり。ごめんな、梶田さん。これを参考にして、次回の取締役会の資料を作ってほしいんだ」

と言いながら、一翔さんはデスクの引き出しから、一枚のCD-ROMを持ってきた。

「必要なデータはこのなかに入ってる。たしか、以前にも作ってもらったものだ」

「はい。覚えています。ああいう感じでいいんですよね?」

「ああ。部長にも、梶田さんの時間を貰うことに許可を得ている。一週間以内に、完成させてくれるか?」
< 69 / 94 >

この作品をシェア

pagetop