過保護な副社長はナイショの恋人
「分かりました。それでは、失礼します」

会釈をして身を翻した瞬間、一翔さんが背後から抱きしめてきた。

「か、一翔さん⁉︎」

いきなりなにをするのかと思ったら、副社長室で大胆すぎる行動に驚く。

「シーッ。大きな声を出すと、荒木に聞こえる」

耳元で、静かに話すその声は、色っぽくて聞き惚れてしまいそうだ。

「でも、こんな場所で、いくらなんでも……」

動揺する私とは違い、一翔さんはいたって冷静だ。

「場所? そうだよな。副社長室だもんな。でも、咲実を見ると、やっぱり愛おしさが込み上げてくるんだ」

「一翔さん……」

私の顔を振り向かせた彼は、唇を塞いだ。優しく触れるキスではなくて、濃厚なキス……。

「ん……」

たまらず出た声に、一翔さんは少しだけ唇を離した。

「声出すなって。荒木に聞こえるだろ?」

「だって、一翔さんが……」

と言い終わらないうちに、再び唇を重ねられる。荒木さんに不審に思われないうちに、部屋を出なくちゃ。

そう思うのに、一翔さんのキスを拒むことができなかった……。
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