過保護な副社長はナイショの恋人
「咲実ちゃん。強引だったかもしれない。だけど、俺の気持ちはきみを好きなことに間違いないんだ」

「先輩……」

その気持ちはとても嬉しい……。だけど、想いに応えることはできない。

一翔さんと別れたとはいえ、私はまだ彼が好き……。

「俺のことを、“先輩”としてではなく、ひとりの男として見てほしいんだ。そうすれば咲実ちゃんだって……」

「ごめんなさい。私、やっぱり雅也先輩を、先輩以上に見れません」

こんなときですら、思い出すのは一翔さんのこと。“咲実をもっと知りたい”。そう言ってくれた彼の言葉が、今さらながら恋しく感じる。

「どうして? 少しくらいは、余地をくれないのか? なにも、そんなすぐに返事をしなくても……」

少し焦り気味の先輩は、私の手をさらに強く握る。だけど私は、その手をふりほどいた。

「すみません……。先輩のお気持ちには、応えられません」

まだ、一翔さんのことが整理しきれていないのに、先輩のことを考えることなんてできない。

ううん、他の誰だって、今は考えられない……。

「どうしても? 他に好きな人がいる?」

先輩の言葉に、私は小さく頷いた。誰かまでは言えないけれど。それでも、ここでは先輩に納得してほしかった。
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