過保護な副社長はナイショの恋人
咄嗟に化粧室のある廊下へ身を隠す。ここからなら、姿を見られることはない。

まさか、本当に一翔さんがいたなんて、一気に緊張で心臓がバクバクしてくる。

「はい、蓮見社長。真衣子さんには、僕から話をします」

近くに聞こえる一翔さんの声。声を聞くと愛おしさが込み上げてきて、切なくなる。

彼から真衣子さんの名前が出てくるくらいだから、きっとうまくいってるんだろう。

私から、別れを切り出して良かったんだ……。

「おじいさまも来られるみたいだし、お互いにとって良い方向にいったらいい」

蓮見社長はそう言って、一翔さんと別れている。社長は店を出たのに、一翔さんは残っていた。

なんでだろう……と思っていると、突然私のスマホが鳴り出した。

「マナーにしとくの忘れてた」

慌ててバッグからスマホを取り出そうとしたとき、

「咲実⁉︎」

一翔さんの声とともに、着信音は消えた。

「一翔さん……」

ゆっくり振り向くと、彼は手にスマホを持っている。まさか、今電話してくれたのは一翔さん? だとしたら、どうして……。
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