過保護な副社長はナイショの恋人
私は、副社長として輝く一翔さんを見ているのが好き。これからも、私たち社員の憧れの存在でいてほしいから……。

だからキッパリ言ったけれど、一翔さんは思い詰めたような表情で、私の腕を掴んだ。

「やめてください、一翔さん」

ここで、私の本当の気持ちを知られてしまってはいけない。自分が彼の幸せを壊したくないから……。

私たちは、一緒になってはいけない。その思いで、一翔さんの手を振り払った。

「咲実……」

「ごめんなさい、一翔さん。雅也先輩を待たせているので。さようなら」

急いで先輩のところへ戻り、店を出る。そのまま先輩とは別れ、ひとりタクシーに乗り込んだところで涙が溢れてきた。

一翔さんは、私の別れ話を納得していない……。それもそうで、あんな一方的な別れ話を、すんなり受け入れろと言う方が身勝手だ。

今でも、彼は疑問を持って苦しんでる……。それが今夜分かって、申し訳なさでいっぱいだった。

どれだけ、一翔さんを傷つけているのだろう。でも、私と付き合っていたら、彼の人生がメチャクチャになってしまう。

それだけはしたくない。だから、別れを選んだ……。好きだから、一翔さんを本当に好きだから、私はこの道を選んだ。

どうか、彼が幸せになってくれますように……。それだけが、今の私の願い……。
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