不機嫌なカレと秘密なつながり
毎日、言われるこっちの身にもなって欲しいよ

『たいした家の出でもないくせに』

クラスメートの言葉があたしの胸に突き刺さる

そうね、確かにそうよ

本家じゃないもの、あたし

分家の人間だから、たしいた財産もない家の子よ

小山内 姫歌(おさない ひめか)

『小山内』の姓を貰ってるけど、本家とは遠い血のつながり

こんなお金持ちのお坊ちゃま、お嬢様が通うような家の子なんかじゃないのに…ね

本家にお願いして、この学校に通わせてもらってる

彰汰から、離れようと思って…なのに、結局同じ学校に通ってるなんて、駄目じゃない

午前の授業が終わると、あたしは食堂でパンを買って廊下を歩いていた

目的の場所は、体育館の裏にある小さな空間

よくカップルが密会に使っている

その木陰に隠れて、あたしは食事をする

静かに、誰にも気付かれないように、そっとパンを食べる

上履きのまま、スポーツ関係の部室の前を素通りしていると、男女の声が聞こえてきた

< 5 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop