不機嫌なカレと秘密なつながり
スッと彰太があたしから離れた
1メートル以上の距離をあけて、向かい合うと、彰太がぎこちない笑顔を作ってみせた
「彰太らしくない言葉」と言いながら、あたしはそっと彰太の頬に手を触れて、「ばか」と小さくつぶやいた
「彰太には責任も後悔も、感じてほしくない。あの日、木登りをしたのはあたし。あたしの意志で登った。負けたくなかったから。彰太に負けたくなくて。あの頃は、あたしのほうが、運動神経が良かったんだよ。なのに成長期のせいで、彰太はより男らしく、あたしは女らしく。差が開いていくのが、憎らしかった。彰太よりもっと高く登って、あたしのほうがスゴイんだから!って言ってやりたかったの」
「姫歌は今でも、俺よりスゴイよ。俺はずっと、姫歌には勝てない」
「……ばか……」
あたしはすごくない
彰太に負けてる
醜い傷跡が残ってるあたしの体を、抱けるのは彰太だけ
この傷で、彰太の心を縛れるなら……と思ってしまう己の醜い心から逃げたくて、彰太のいない学校を選んだあたしは、とっくに彰太の心に負けてるよ
1メートル以上の距離をあけて、向かい合うと、彰太がぎこちない笑顔を作ってみせた
「彰太らしくない言葉」と言いながら、あたしはそっと彰太の頬に手を触れて、「ばか」と小さくつぶやいた
「彰太には責任も後悔も、感じてほしくない。あの日、木登りをしたのはあたし。あたしの意志で登った。負けたくなかったから。彰太に負けたくなくて。あの頃は、あたしのほうが、運動神経が良かったんだよ。なのに成長期のせいで、彰太はより男らしく、あたしは女らしく。差が開いていくのが、憎らしかった。彰太よりもっと高く登って、あたしのほうがスゴイんだから!って言ってやりたかったの」
「姫歌は今でも、俺よりスゴイよ。俺はずっと、姫歌には勝てない」
「……ばか……」
あたしはすごくない
彰太に負けてる
醜い傷跡が残ってるあたしの体を、抱けるのは彰太だけ
この傷で、彰太の心を縛れるなら……と思ってしまう己の醜い心から逃げたくて、彰太のいない学校を選んだあたしは、とっくに彰太の心に負けてるよ